ここ数年のコロナ禍という状況の最中、大打撃を被ったのが飲食業界全体となります。
かつてないほどの苦境に立たれる中、全国チェーン展開している企業もまた厳しい時代となっています。
そんな飲食店の中で、チェーン「大戸屋」の客離れが止まらない状況となっています。
というわけで今回は「大戸屋に見る事業戦略の失敗と客離れの理由」について詳しく説明致します。
大戸屋に見る事業戦略の失敗と客離れの理由①【大戸屋最大の失敗とは】
「大戸屋に見る事業戦略の失敗と客離れの理由」というテーマで1つ目に取り上げるのは「大戸屋最大の失敗とは」です。
実店舗の営業においては、集客が命となります。
お客さんあってこその商売であり、顧客が足をどれだけ運んでくれるかによって、売上に直接的に関わります。
いつも満席な人気店もあれば、今にも潰れそうな雰囲気を醸し出すような閑古鳥が鳴いている、そんなお店も世の中には存在しています。
全部が全部上手くいけばいいのですが、現実的には、思い描いているように、そんなに物事が上手くいくとは、限りません。
特に飲食店ともなれば、他店との違いをどこで作るかを見出すことは、非常に大事なこととなります。
そんな飲食店は数あれど、全国チェーン展開をする定食店「大戸屋」ですが、ここ数年、顧客離れが止まらない状況となっているのです。
バランスのとれた定食を食べれるということで、です大戸屋ファンというのは、これまで多数存在していましたが、実際のところ既存店客数が3年連続で前年割れしている厳しい状況が事実としてありました。
それに準じて営業利益そのものも落ち込んでいる状況で、経営状況は芳しくないのです。
大戸屋を運営する大戸屋ホールディングスは債務超過を事実として公表し旧経営陣を一掃したのです。
が、しかし、これがあまりにも戦略的に操作されたという印象から、これまで大戸屋を支えてきた大戸屋ファンも懐疑的にならざるをえなくなったというのが本当のところと言えるのではないでしょうか。
企業としての大戸屋の選択したアプローチというのは、はたして適切なものだったと言えるのか?疑問をもたざるをえません。
近年の騒動は正にお家騒動とも言え、様々なメディアで報じられましたが、最終的には、コロワイドグルーブによる買収という形で事態は一旦、収束しました。
企業としての対応としては、外部から見れば迷走したような印象を受けざるをえず、明確な理念やコンセプトというのは、どれだけあったのかと考えざるをえません。
最終的には買収にまで発展したことで世間からは、非常に厳しい評価を受けることとなったのです。
旧経営陣においては、責任逃れともとれるやり方についても、あまり良い印象はなく、お店に対しても、悪印象がついてしまったことは歪めません。
飲食店にとって、実際の企業としての印象と経営陣の行ったことと、お店を運営するスタッフとは、別ではあるととらえられることもありますが、同じ企業としての看板を背負っていることは間違いなく、企業としての責任を感じざるをえないのです。
では、大戸屋が内部で対立したという争点とは、いったいどのようなものだったのでしょうか。
それは、店内調理とセントラルキッチンという2つの意見があったことによるものです。
大戸屋のコンセプトというのは、家庭的なメニューの定食が売り。まるで家庭のような雰囲気を醸し出し自家製にこだわるのなら、やはり店内調理にこだわるのも当然理解ができるところです。
その一方、セントラルキッチン方式というのは、飲食チェーン店では、よく使われる手法とも言えます。
集中的にある程度の調理や下処理を行った上で各店舗に食材を配達し、各店舗での調理の負担をできる限り減らすという方法は、コスト削減と効率化を生み出すこととなります。
一般的なチェーン店のビジネススタイルとしては、セントラルキッチンも決して悪いわけではありません。
しかしながら、現実においては、コロナ禍という状況の前では、どちらにしたって戦略的な解決要素には、決してならないわけだったわけです。
現時点においても終息を見せないコロナ禍という状況で、大戸屋のみならず、飲食業界全体にとっても業績への影響というのは、非常に大きいものがあるというわけです。
そのような外的要因も強く影響している中、大戸屋そのものの業績というの来店者数の元宵に比例し、売上高も減少してます。
業績低迷を留めるには、いくつもの外食産業が行っているようなイートイン以外の戦略というのが確実に広がってくるというわけです。
テイクアウト需要が広がる中、確実にそこに活路を見出す戦略というのを各店舗で見つけていく必要があるわけです。
ビジネス街の店舗によっては、ランチ時になると多くの弁当販売により、それなりの成果はあったものの、出店条件からしても路面店が少ないという大戸屋にとっては、他店に比べてデメリットとなることも非常に多かったということになります。
大戸屋に見る事業戦略の失敗と客離れの理由②【客離れの理由】
「大戸屋に見る事業戦略の失敗と客離れの理由」というテーマで2つ目に取り上げるのは「客離れの理由」です。
では、それ以上に具体的に大戸屋の失敗というのは、何があったと言えるのでしょうか。
店舗の特徴そのものを見直すと商品開発を含めた商品戦略そのものが大失敗しているのが原因の一つであります。
大戸屋の原点というのは、そもそもは顧客に喜んでもらうための手作り料理戦略でした。
しかし、実際の商品開発においての決定権においては、持つのは顧客ではなく社長自身ということでした。
ここにまず、大戸屋としての企業としての体質における違和感があったのです。
メニューに関しても全店舗全国一律のレシピというのも、戦略的に疑問を抱かざるをえないところにあると言っても過言ではないのです。
地域性により異なる顧客ニーズに応えるという対応をしてもよさそうなだけに、顧客を全く意識していない経営戦略が不自然でならないのです。
客層や地域性によって異なる純粋に「美味しい」と思えるものについても、積極的に応えるべきではなかったのではないでしょうか。
考えようによっては、外食産業のチェーン店においてオペレーションの簡素化というのは、業務の効率化という意味では、必要不可欠なものとされています。
だからと言ってそれは、顧客ニーズに必ずしも合致しているというわけではなく、売り手の勝手な都合であるとも言えます。
大戸屋のような定食を売りとするならば、やはり手間暇をかけてでも”店内調理”にこだわる理由もわからなくはありません。
しかしながら、店内調理にこだわる限りは、コスト増を招きかねないのです。
店内調理にこだわれば、提供するメニューには、ある程度納得できるものができたとしても、価格という面からすれば、割高になってしまう傾向があります。
割高感という意味では、顧客がダイレクトで感じてしまえば、それはそのまま客離れという深刻な問題へと直結してしまうことになりえるのです。
もちろん顧客からすれば、提供されるメニューに対して、十分な対価を感じるのなら、お金を払うのは、いとわないと判断するわけですから、商品への魅力のなさ、企業力のなさと言われれば、それまでです。
一度根付いた割高感を拭い去ることは、飲食店にとっては非常に厳しい事実として受け止めなければならないのです。
客離れの背景はズバリ「価格の高さ」にあることは、間違いありません。
その他の外食チェーンの中でも大戸屋は、高い部類であるのです。
同じ定食チェーンの「やよい軒」なら、700円台ということを見ても大戸屋の高さというものが、どれだけのものかがわかるのではないでしょうか。
大戸屋に見る事業戦略の失敗と客離れの理由③【セールスポイントが経営の仇となる】
「大戸屋に見る事業戦略の失敗と客離れの理由」というテーマで3つ目に取り上げるのは「セールスポイントが経営の仇となる」です。
しかしながら、大戸屋の価格が高めであるとしても、価格に見合った「美味しさ」がしっかりあれば全く問題はないのです。
ということは、価格には見合っていないと感じている顧客が多数いるということが客離れの要因となっているわけです。
もちろん、現在の価格で満足している顧客も当然いらっしゃいますが、客数の減少という事実にしっかりと向き合っていく必要性があることは、当たり前のことなのではないでしょうか。
かつての大戸屋の価格帯は600円台ということでした。いくら物価が上がっているとはいえ、高価格メニューの投入における戦略は、「大戸屋は高い」というイメージを広げたにすぎないのではないでしょうか。