売り手市場が強い現在の雇用情勢の中で、新卒者や若手社員の離職率の増加はどの企業も頭を悩ませていることと感じます。
新卒者のモチベーションを様々な点から刺激することで、離職を食い止める方法を紹介します。
目次
介護業界の実情と離職率
介護サービス業を担っている会社にとって、業界の例に漏れず新卒者の3年以内の離職率の高さは大きな問題となるケースが多いと思います。
業界全体が人手不足であり、優秀な介護の人材は激しい奪い合いの様相を呈しています。
即戦力人材を都合よく獲得できるという状況にありません。自前で採用した人材、特にこれからの業界を担っていく新卒社職員を教育していく必要があります。
介護という職業の特徴上、新卒者はすぐに即戦力になれるわけではありません。介護系大学を卒業して資格を持っていたとしても同様です。
せっかく獲得した人材がすぐに辞めてしまっては、それまでの費用と時間が無駄になってしまいます。
如何に新卒者の離職率を抑えるか、この問題を解決する方法を見つけ出すことが私たちが取り組んだミッションでした。
なぜ3年以内で離職してしまうのか
まずは、なぜ新卒者が弊社を辞めてしまうのかということについて徹底的に検討を重ねました。
それまでは、「近頃の若いものは根性がないから」「適正がないから」といった安易な理由付けに流れ、社内の誰一人その理由を深く検討したことはありませんでした。
こうした若者への自己責任論を振りかざすのは止めました。
弊社で働く30歳以下の若手職員全員からヒアリングを行いました。
仕事を辞めたくなったことはあるか、どのような時にそう思ったのか、どうして踏みとどまったのか。こうした質問を繰り返すことで、新卒者が3年以内に辞めてしまう理由が次第にわかってきました。
一般的に言われている労働環境の辛さや賃金の低さといった要因もありましたが、それ以外にも辞めてしまう要因があることがわかりました。
そして、大きな3つの問題点が見えてきました。
仕事上の目標が見えにくい
個人のがんばりが数字に反映される営業などの仕事と違い、介護職は成果が見えにくいと性質があります。
その結果、仕事上の目標が見えずに疲弊してしまう職員が多い事が分かりました。
悩みを打ち明ける人がいない
入居者さんやそのご家族との人間関係に悩む職員がかなり沢山いることがわかりました。
生真面目で優秀な人材ほどそうした悩みを抱えやすく、加えて、人に打ち明けられないことも判明。
自分自身に問題があるのではと思い込んでしまい、精神的に落ち込んでしまうことが離職原因になっているようでした。
単純作業の連続で退屈だと思われる
職場全体でマニュアルを強く意識しすぎた結果、仕事が単純作業の連続で退屈なものと思われてしまっていたということです。
入居者さんのお世話はマニュアルに従った物になりがちです。
入居者さんが安全安心に暮らせるためのマニュアルですが、それを意識しすぎた結果、仕事上で創意工夫をする余地を職場全体が失っていました。
特に、先輩職員から基本の徹底を指導されることが多かった若い職員たちにとっては、窮屈で創造性を発揮できない職場だと失望を感じることもあったそうです。
こうして見えてきた3つの問題点は、いずれも職場の慣習やシステムに起因するものでした。
賃金などは外部要因が占める部分が大きくすぐに改善することは難しいですが、3つの問題点は自分たちの努力で見直せるものです。
新卒離職者を減らすためには、3つの問題点を解消する方法を考え出す必要があると結論が出ました。
離職者を減らすための取り組み
明らかになった3つの問題点を解消すべく、3つの対策案を打ち出しました。1つの問題点に1つの対策ではなく、1つの対策で複数の問題点をカバーしています。
では、具体的な対策案をご紹介していきます。
資格取得支援の強化
今までも資格取得支援制度はありましたが、その支援を強化しました。勉強の為の出費やテストを受けるための費用に対する補助、合格した場合のお祝い金、職場に関するものなら資格手当を給与に上乗せすることを行いました。
介護関係の企業でも、介護に直接かかわるもの以外の資格の取得も支援をしていくことも大事です。
基本やマニュアルを覚えることに費やされがちな新卒時代、それが仕事上の目標の喪失や単純作業のルーティンワーク化を生み出していました。
しかし、資格取得という目標を持ってもらうことで、
- 仕事をしていく上でのモチベーションが保たれます。
- また、資格取得のための勉強をすることで、職場内にとどまりがちな視野を広く社会に向けることができます。
メンター制度の導入
新卒で働き始めた職員一人一人に対し、比較的年齢の若い職員をメンターとして配置、彼らに相談役としてサポートしてもらいます。
メンターは定期的に面談を行い、職員がなにを考えているのか、悩みごとはないのかなどを把握。必要とあらば、さらに上司へと相談します。
入居者さんとの人間関係といったセンシティブな話題でも、年が近いメンターになら抱え込まずに相談しやすいと好評でした。
上に立つ立場の職員からも、距離が合ると直接は聞きにくいことでも、メンターを通して考え方が把握できるメリットがあります。
若手が中心となるプロジェクトを作る
難しく聞こえますが、経験が少なくても活躍できる場所を若手に任せるということです。
例えば、施設で行われる夏祭りなどのイベントを3年目までの若手主体で取り仕切ってもらいます。
イベントの内容を考えたりすることは創意工夫の余地が大きく、普段はマニュアルを覚えることで精一杯になりがちな頭を柔らかくしてもらえます。
イベントを通して若手間のつながりも強くなり、職場の人間関係も良好になりました。
職場に自由な雰囲気が生まれると、自然と施設運営をより良くするための提案が若手から生まれるようになります。
イベント事を上手に使いこなし、職員に自由闊達で創造性のある仕事ができる空気感を実感してもらうことができます。