弊社が、良い人材を集めるために行っていた求人対策を紹介します。最初それはインターネット広告求人でしたが、インターネット上で「会社のサービス残業」を多数批判され、応募は激減しました。その後、残業体制を改善した結果、応募数は回復し、退職者数も減りました。
「会社への批判を真摯に受け止め、フィードバックした」ことが、良い人材を集め、退職を防ぐのに最も効果的だったのかもしれません。その具体策をお話しさせていただきます。
目次
ウェブでの人材採用のメリットとデメリット
人材採用には様々な方法があります。インターネット媒体による求人広告、人材紹介エージェントを使用した求人、ハローワークなど従前のアナログ手法、知り合いの紹介など。私たちは費用対効果の観点からインターネット媒体による求人広告を主に使用して、コストをかけず、適切な人材を集めていました。
しかしある時期から応募が激減したのです。
応募数が減るだけではなく、滑り止めというか、モチベーションのない応募者も増えました。このことによって、採用活動が大幅に制限され、非常に困難なことになりました。
私たちはその原因を探して課題解決に取り組まなくていけない状況に追い詰められていたのです。
求人全体が減ったのか?
求人の際の比較対象として、ときには人材紹介エージェント(成功報酬型)やハローワーク型も使用していました。
インターネット求人と人材紹介エージェント求人に比べて、ハローワーク型の方はそれほど応募の質や数も変わっていないことが分かりました。
その後も社員へのヒアリングを含めて、いくつかの調査をしたところ、ある事実が判明しました。
会社の評判サイトとは
インターネット上には、会社の評判サイト系列という種類のものが複数あります。以下に例を説明します。
会社の評判を書き込むサイト
現職社員、退職者が会社の評判を書き込む。会社の残業体制や社風など複数項目に採点評価し、ポイント評価を決めることができるものもある。転職会社サイトがサービス提供しているものもある。
会社の愚痴や噂サイト
会社の愚痴や噂を書き込めるサイト。多くの会社名がおそらく自動で投稿枠をつくられている。
某巨大掲示板系列
特定の会社の投稿スレッドがたち、様々なうわさや愚痴、暴露話があげられる。まとめサイトなどにも拡散する。
このようなサイトは、昔と比べて多種多様に増えてきました。また検索結果も下手をすると公式サイト付近に出現するくらいです。
私たちの会社のネット上の批判は数多くありました、
- 「残業嫌だ。辞めたい」
- 「タイムカードを押してから残業させられる」
- 「管理職の自慢話が意味不明」
- 「支店長はタバコ休憩ばかりで仕事していない」
- 「典型的なブラック企業」
などです。
ここにきて私たちは、インターネット求人と人材紹介エージェント求人に低下率に比べて、ハローワーク型の方は影響がない理由を理解しました。
前者タイプはインターネットによる情報収集を細かく行う傾向にあります。一方後者型はインターネット情報収集の比率はそれほどないのかもしれません。
このような会社の批判が公になったときに、人事部も大きく責められました。
- 「ネット批判するような人材を選んだのは人事部の責任」
- 「円満退職できずに遺恨があったから、こうなった、人事部の責任だ」
などです。かなり八つ当たりもはいっていますが、確かにこのような人材を採用面接で弾き、ネットリテラシーの高い人材育成を心がけるなど、一抹の責任と改善方法もあるのでは思いました。
会社の評判サイト対策~人事活動として
会社の評判サイトの件は社内でも問題になりました。ここに挙げたものは人事採用のイメージアップのための施策でしたが、あまりにもひどいので参考にしないでください。むしろ反面教師にして頂く方がよいでしょう。
犯人探し
社内の犯人探しが始まりましたが、これは逆効果でした。なぜなら書き込みしたのはやめた人間かも知れなかったですし、なにより社内の人間関係がギスギスしすぎて、会社の状態が悪くなりました。
サイトへの削除依頼
弁護士や削除業者を使った削除依頼も行いましたが、時間と費用が掛かった割にこの方法はいまひとつでした。まず、サイトによっては表現の自由を盾に削除を拒否してきましたし、投稿者のIPアドレス開示にも応じませんでした。
たまに応じられてもフリーWIFIや海外IPであり、意味がないわりに交渉費用は支払う羽目になりました。
また削除に成功しても、新しい投稿が増えるなど完全にイタチごっこだったのです。 こちらは高い費用と時間をかけて1つの投稿を削除するのに、投稿する方は5秒でできる。これでは話になりません。
巨大掲示板や評判サイトへの自作自演工作
やめればよかったのですが、ある40代管理職が評判サイトに自作自演で自社高評価と会社をほめる投稿を繰り返しました。
しかし、稚拙というか、ネットのセンスがないというか、おそらく評判サイトや巨大掲示板に投稿しているのは20代の若手中心なのでしょう。自作自演をすぐに見破られ、逆にそれが馬鹿にされる結果になりました。
自分の苦手なフィールドで悪手をしたようです。その自作自演は笑いものにされ、ツイッターで拡散もされました。おそらく現職社員も鼻で笑っていたことでしょう。
人事採用活動のための白旗~敗北宣言
どうやら分が悪い勝負の様子でした。
このままインターネット上の批判が激化しても人事採用活動にも経営によい結果は生まれません。
また、採用だけではなく、現職の社員も「サービス残業」などの不満を増加させて辞めるリスクを高めることでしょう。これは2重の意味で人材を失う、致命的な状況と言えます。
そのため、人事部は取締役を巻き込んで、素直に白旗をあげることにしたのです。
その後の状況
その後、社内の雰囲気は少し明るくなりました。
いま思えば、インターネットに会社批判するということは、相当業務の負担とストレスが蓄積していたのです。「サービス残業なしなら会社の業務が回らない、倒産する」と騒いでいた管理職もいましたが、サービス残業を廃止しても業績は変わりませんでした。むしろ売り上げがあがった部署も出たくらいです。
インターネットでの批判は完全には消えませんでしたが、少しは減ったような気もします。
ネットに記載した情報は消えないとは言われていますが、実際は日々の新しい投稿に希釈され、目立たなくなるのではないでしょうか?少なくても、インターネット上の会社批判が前ほど増えてはいないのは確かです。
人材採用は内部の改善から始まる
人材採用は複数の要素がからむために、一概には言えません。しかし、その後はインターネット求人と人材紹介エージェント求人の応募者の質と量は以前より改善されたと思います。
なにより、サービス残業を廃止してから、退職者・転職者がかなり、減りました。隠れブラック企業が多いこのご時世です。少しでも労働環境の良い職場なら、転職しようとするリスクはとらないのではないでしょうか?