デジタルシフトが進む中、様々なサービスがサブスプリクション化しています。特にソフトウェアに関しては、パッケージよりクラウドへの移行が顕著となっています。
進化する企業としてadobeは、クラウド化による戦略を推し進めています。
というわけで今回は「adobeのクラウド化戦略による成長モデル」について詳しく説明致します。
adobeのクラウド化戦略による成長モデル①【クラウド型ビジネス】
「adobeのクラウド化戦略による成長モデル」というテーマで1つ目に取り上げるのは「クラウド型ビジネス」です。
画像の加工や動画の編集など、デザイナーやプロがこぞって使用する様々なツールを提供しているのが「adobe」です。
adobeと言えば、PhotoshopやIllustratorといったソフトが有名ですが、ウェブサイトの需要が高まったことでデザインツールとしてのadobeの認知度も高まってきました。
長年においてプロデザイナーの仕事を支えるソフトウェアを提供している企業として知られていますが、ここ数年間でのadobeのビジネス戦略は大きく方向性を変えてきていることがわかります。
戦略的なアプローチとして何をどう変えているのかと言えば、adobeの持つ全てのソフトウェアをクラウド型に転換させているのです。
デジタルシフトが加速する時代において様々な企業がクラウド化への転換を新たな事業戦略として実行していますが、転換に成功したビジネス事例としてadobeの戦略は非常に参考になるのです。
SaaSビジネスへの見事なまでの転換は、企業としての成長をさらに加速させることになることは間違いありません。
adobeが具体気にクラウド化へシフトしたのは、2011年のこととなります。
PhotoshopやIllustratorというソフトがメジャーとなりますが、そもそもこれらの商品はパッケージ販売を基本としており、売り切り型のモデルとしての販売戦略となっているのです。
グラフィックデザインや動画編集をクリエイティブにサポートする「Adobe Creative Suite」は、全世界の多くのユーザーから高い支持を受けていました。
やはりデザインツールとしてのadobeは他社を圧倒しているクオリティの高さを誇示してるのです。
2011年の売り上げ高は34億ドル、粗利率97%と脅威的な売り上げをあげており、唯一無二の存在であることを実証していました。
これだけの売り上げがあるにも関わらず、なぜあえてビジネスモデルを転換する必要があったのか?と疑問に感じてしまうこともありますが、実はadobe Creative Suiteには大きな問題を抱えていたことがあります。
adobeのクラウド化戦略による成長モデル②【adobeが抱えていた問題とは】
「adobeのクラウド化戦略による成長モデル」というテーマで2つ目に取り上げるのは「adobeが抱えていた問題とは」です。
その問題とは将来的な企業の成長にダイレクトに繋がることで、あくまで基本はパッケージの場合、定期的に単価を高めることでしか企業としては成長させることができないということでした。
パッケージの売り上げとしては十分にあるようにも捉えられますが、実は売り上げ的な数値としては何年間も変化がありませんでした。
adobeが収益を高めていたのは、顧客単価または商品単価を上げることでしかなかったのです。
そしてもう1つですが、ソフトウェアのアップデートの頻度に時間を要するということでした。
クリエイティブなソフトウェアだけにアップデートとなると、それなりのコストと時間を要することはいたしかたありませんが、軽微なアップデートであったとしてもパッケージ商品として出すならリリースのタイミングを明確に決めなければならないのです。
1年半から2年という更新のブランクは、顧客から見れば決して満足できている状態とは、言えなかったのです。
世の中のデジタルシフトが仮足し便利になればなるほど、ユーザーの要求というのは、上がっていったのです。
そんなユーザーの求める要求に対しadobeは対応しきれていないという事実もあったことは間違いありません。
それでも時代は進み、世界的な不景気となった2008年のリーマン・ショックが発生し、adobeでさえも年間売上高は約20%もダウンしたのです。
この時のadobeの企業価値というのは、明らかに落ち込んだと言え苦境に立たされた時期でした。
苦境を乗り切ろうとadobeが行ったのはマーケティングへの注力やアップデート頻度の向上でしたが、それでも結果は伴わなかったのです。
この時、一時的なユーザー離れもあり、ユーザー数そのものも減少傾向にありました。
時代的にはユーザーがスマートフォンに移行し、Instagramの登場などもあり、新たなデバイスとメディアへの関心が高まったからです。
パッケージ商品での売り切りモデルに対しては、限界があるということをadobeの経営陣は理解していたということになります。
そこでadobeが売って出たのは、サブスクリプション型のパッケージである「Adobe Creative Cloud」です。
リリースは2011年の11月、2012年5月から販売開始となりました。
これによりAdobeは、定期収入を獲得することが可能となったのです。
結果的にこれが成功しサブスクリプションの売り上げが割合的に大半となりました。
adobeのクラウド化戦略による成長モデル③【adobeの転換戦略】
「adobeのクラウド化戦略による成長モデル」というテーマで3つ目に取り上げるのは「adobeの転換戦略」です。
これまでのパッケージ主体という売り切り型のサービスからサブスクリプションへシフトする時点での企業にとってのマイナス面も一時的に現れます。
となると、転換直後というのは、これまで売り切っていた金額分の売上には、届かないわけですから、一時とは言えども売り上げは減少するわけです。
この間、企業としては、踏ん張り所で経営を正常に保つために投資を行う必要があり、コストは増大するというわけです。
例え一時的であり、時間が経てば徐々に正常に戻るとは、言えビジネスモデルの大きな転換時というのは、それなりにリスクもあるというわけです。
想定通りに物事が進めば時間の経過と共に収益性は向上し投資額も減少していきます。
収益がコストを上回る時期を過ぎれば、定期収入を得られるようになるのです。
企業にとっての継続的な売り上げ確保は、企業経営を安定させることになるのです。
adobeはサブスクリプション型に転換した直後にそのような状態になることは、当然予測の範囲であったわけです。
そのようなビジネスモデルの転換期によるリスクを抑え、転換を成功させるために必要とされるのが従業員や顧客とのコミュニケーションです。
ビジネスモデルの転換には、リスクがあります。
転換したからと言って必ず成功する保証はありませんし、転換したことにより売上が減少し客離れに繋がることだって大いに有り得るのです。
これまでのスタイルからリスクをおってまで変える必要がないのではないかという保守的な考え方の人も必ず存在するからです。
ビジネスとしての長期的なスパンで考えた時に、目先の利益だけでなく、将来的な収益を生むことの必要性があることを従業員には納得してもらう必要がらあり、顧客にはビジネスモデルの転換により得られるメリットと転換の理由を伝える必要性があるのです。
この転換期においてadobeは、全てのソフトウェアを一気に変えていくわけではなくAdobe Creative Cloudのリリースから約1年間は、売り切り型との販売も平行して行っており、ユーザーに対しても選択の余地を残したのです。
現在では、全てのadobe製品がサブスクリプションへの移行を完了しましたが、経営そのものは、非常に安定しています。