よく人事関係の業務に携わっている友人から「良さげな人材だなと思って採用してもすぐに辞めちゃう」とか「なかなか成長してくれない」といった悩みを聞きます。会社と合う・合わないはありますし、昨今の終身雇用に対する価値観の変化もあり、人材育成は企業にとって死活問題です。
そこで今回は、「いかに新人を成長させ、会社に貢献してもらう人材に育てていくか」この方法を2つお伝えします。
まず「辞めていく理由」を考えてみよう
そもそもどうしてせっかく採用した人材が辞めていくのか。様々な理由があるでしょう。
- 「思っていた仕事(会社)と違ったから」
- 「上司や同僚など、人が合わなかったから」
- 「他に良い会社を見つけた、あるいはスカウトされたから」
などでしょうか。
- 「体を壊したから」といった理由
も考えられるでしょう。
結局、人材を根気よく育成できる企業というのは後者のように「自省」「改良」「発展」を絶え間なく続ける会社なのです。
人材育成は会社をより良くするための重要なタスクと考えておけば、前述で挙げた辞める理由の大半は解消されていくはずです。
OJTを社内全体で共有
では具体的にどうすれば人材育成に成功するのか…経験上私は2つの方法を推奨します。
OJTを社内全体で共有すること
OJTとはOn the Job Trainingの略で実際の仕事現場で、業務を通して上司や先輩社員が新人社員の指導を行うことです。実務をこなすことでセミナーや研修とは一味も二味も違った緊張感が生まれますが、即戦力に繋がる人材育成が出来るため大半の企業がこのOJT制度を採用しています。
ただOJT制度自体が素晴らしいものでも、そのやり方が間違っていては育つものも育ちません。特に人材育成が上手くいっていない企業はそれが顕著です。
正しいOJTのやり方とはどういったものでしょうか?
それはずばり、社内全体で共有するやり方です。
まず通常のOJTの流れを見ていきましょう。
- 育成ポイントの決定
人事部と上長が話し合い、新人社員に任せる仕事内容を確定、育成したい部分も協議する。 - 期間決定
いつからいつまでとOJTの育成期間を決める。 - 新人社員への提示
①と②で決められたことを新人社員に提示する。 - 振り返り
OJTの期間中、何度か成長具合を評価する機会を作る。 - 修正
それまでの結果と成長具合を照らし合わせて、育成計画を調整していく。
ここまではOJTを採用している大半の会社が実行しているはずです。問題はここからです。
人材が思った以上に育成できていない会社というのはOJTを完全に現場任せにしています。
フォロー研修のように、入社半年~1年後に行われる研修でOJTの評価を社長自ら新人社員に伝えたり、それまで接点のあまりなかった人事部の人が「〇〇君(さん)のこういう点を評価します」等と伝えたりすると、「この会社は僕(私)のことをよく見てくれてるな」とより成長するように励むでしょう。
このOJTをより成功に結び付けるには以下の3点が上手く機能しているかを確認して下さい。
- 新人社員それぞれ能力が違うため、部署ごとに育成計画・内容に差異があるのは当然だが能力に見合ったものになっているかのチェック。実現不可能な育成計画は無意味です。
- 上司や育成担当者がOJTへの意識をより深めるための勉強をしているかどうかのチェック。必要であればOJTを行う側の上司や担当者が人材育成のプロが開くセミナ-に参加することも望まれます。
- コンプライアンス違反をしていないかチェック。人材育成に熱心になるあまり、法令を無視する企業も少なからずあります。他もやっているからうちもいいだろうとかバレないだろうといった考えは会社の質を落とすだけでなく、人材育成でも悪い結果が出かねません。
コミュニケーションをとる
もう1つの方法は月並みかもしれませんがコミュニケーションをとるということです。ひと昔前は、飲み会での「飲みにケーション」や喫煙所での「タバコミュニケーション」なんて言葉がありましたが、時代は変わり最近の新人社員は上司や先輩社員からの誘いを「迷惑」と捉える傾向にあります。
もちろん無理強いすることはできません。パワハラ・セクハラ問題も考慮しなければいけませんが、飲み会に強引に誘ったりしなくても職場では必ず挨拶をする、誕生日だったら「おめでとう」の一言くらいかける、浮かない顔をしてればお昼でも行かないか?と声をかける、何か困ったことがあれば何でも言えよと助け船を出す、こうした小さいことの積み重ねはとても大事なことです。
仮に断られたりしても決して怒らないようにしましょう。
「どうしてこっち(企業側)が新人社員のためにコミュニケーションを取る努力をしなければいけないのか」と古い考えの人もいますが、それは違います。人材を育成することは会社の価値を高めることです。そして会社の価値が高まればそこで働く人たち全てに恩恵があります。
コミュニケーションは一朝一夕にはとれないかもしれませんが、最強の人材育成方法の1つだと断言できます。