私は医療サービス会社の人事職をしていましたが、一時期毎月のように退職が相次ぎ、構造的な問題に気が付きました。そこで私たちは新しい「社員が辞めさせないための人材育成」を始めたのです。
それは社員の本音を聞き出すようにし、さらに社内の問題管理職との調整を進めることでした。結果的に退職者は減り、会社の業績もあがりました。この話のエッセンスが皆様の一つの指針になれば幸いです。
社員が辞めさせないための人材育成方法とは!?
みなさまのお役に立てばと思い、医療系サービスの会社の人事経験をお伝えします。
医療系サービスといえば、専門職も多く、求人も思うように集まらないことがあるのではないでしょうか?また優秀な人材程、少しのことで転職してしまうことも多いのでやめてほしくありません。
採用活動が大変な分、転職や退職をされることは大きな作業ロス、業務のやり直しになります。実際私たちの会社は一時期、長続きする人がいなく、すぐに退職、早い人は試用期間中に自分から辞めていきました。
そこで、社長が変わったのを機に私たちは内部を改革し、人材育成、その他の方新規針を進めました。そのお蔭かどうかはわかりませんが、今は社員の定着率も増え、採用活動、人事活動も安定した生産性を生み出すようになったと自負しています。今日はそんなノウハウがみなさんのお役に立てますと幸いです。
社員はなぜ早くに辞めるのか?「反省から始めたこと」
退職者が相次いだとき、私たちは考えました。多いときは1か月に2人が退職しました。
- 「最近の若手社員は根性がない!」
- 「学歴のない奴(地方出身者は)は根性がない」
など、退職の原因を社員に転嫁し、採用活動自体が迷走していた時期があります。
社員のせいにすればするほど、それは結果的に私たち人事部の首をしめました。
「学歴のせい」にすると、結果的に有名大学出身者からしか選考できなくなり、「ある地方出身」のせいにすると、そのごそこからの人材はとれなくなったのです。どんなに人間的にも能力的に優れていても、です。
しかし、何人かの担当者はあることに気が付きました。「そういえば、退職者はみんな、退職理由を言った人が一人もいない」。
そうです、みんな「一身上の都合」とか、家族理由とか、お茶を濁すような言い方でしか退職理由を言わないのです。
はたして、みんな一身上の都合なのでしょうか?いえ、違います。
人事部の新入社員2名による他部署交流
新しい施策を試みる必要がありました。まず、最初に「会社側」と「新入社員」の風通しを良くすることが必要だと考えました。
そのため人事部に社交性があって真面目そうな新入社員を男女1名ずついれました。
またランチなども積極的に参加させたのです。最初は警戒されていた彼らも少しずつ、信用され、新入社員や中途社員、中堅社員たちから本音に近い言葉を少しずつ聞くことができたのです。
誤解のないようにいえば、これはスパイ行為ではありませんし、そのようなやり方は禁止していました。
人事部社員はそれを正直に実践していたので、各部署の社員は「相談のつもりで胸を打ち明けた」のでした。
彼ら社員たちの悩みとは、例えば以下のようなものでした。
- T支店長がセクハラ飲み会をして困る。研修という名のイジメがある。
- 同業他社にくらべてサービス残業が多いと思う。
- 会社に寝泊まりしている人がいる。夜に使用携帯に電話する男性管理職がいる。
- U所長は経費を誤魔化しているなど。
このような不満や悩みを持っている人材は潜在的な退職予定者になる可能性があります。
社内の調整
人事部はあるときは力がありますが、社長の交代によってそれは上下します。
私たちはそのように勢力が変化しながらもわずかずつですが、社内文化を悪くしている原因や管理職を軽減していこうと思いました。時には問題のある管理職が退職することもありました。でもそれは良かったと思います。
なぜなら誰でもできる仕事をしている管理職1名やめる代わりに、4人以上の一般社員が退職を思いとどまったこともあるからです。
また今回はたまたま不正行為の情報があったからよかったようなものの、そのような地雷は早めに対応しないと、もっと大きな問題になるからです。この社内調整はおだやかには進みませんでした。ときには、ある管理職は私たち人事部を縮小し、人減らしを仕掛けてきたこともあったくらいです。
管理職との争い
私たちは社員側になって、社内統制をすると、問題のある管理職たちの中には過剰反応をしてくる人も数名いました。
人事部に怒鳴り込む管理職、社長や取締役を巻き込んで上から潰そうとしてくる管理職などです。社員側に立って社内を変えるということは、波風を立てない簡単な方法ではなく、争い、ときには自分たちにもリスクのあ方法でした。
しかし、結果的に社員は定着し、会社全体の利益率も向上したために、最終的には私たち人事部の社内の発言力は強まり、生き残ることができました。
多くの社員が味方になり、問題のある管理職の不正行為や問題行動を暴露したのも大きかったといえます。
私たちの人材育成の考え方は労働者側の理想論でしょうか?
いえ、違います。
会社の財産は「人」「もの」「金」です。