一時、低迷していた日本のウイスキー市場ですが、今ではすっかり定番化したのが「ハイボール」。
これは、サントリーによるマーケティング効果が現れた結果なのです。ビジネスモデルそしてマーケティング事例として成功したわかりやすいケースです。
というわけで今回は「マーケティング成功事例。とりあえずハイボールに至るまで」について詳しく説明致します。
マーケティング成功事例。とりあえずハイボールに至るまで①【ウイスキーの価値を変えた戦略】
「マーケティング成功事例。とりあえずハイボールに至るまで」というテーマで最初に取り上げるのは「ウイスキーの価値を変えた戦略」です。
「お疲れ様」と言って、一日の仕事終わりに皆さんは、喉を潤すものと言えば、いったい何を想像しますか?
とりあえずの一杯としては、やはり「ビール」でしょうか?
今、その選択肢は広がっています。「ビール」に変わる飲みはじめの一杯として、コクと爽やかなキレがあり、ぐいーっと飲み干せるドリンクとして「ハイボール」があります。
「ハイボール」も今では、かなり定着してきたのではないでしょうか。
そんな「ハイボール」の火付け役となったのは、飲料メーカー大手のサントリーです。
「ハイボール」と言えば「ウイスキー」+「炭酸水」+「氷」の3つによって成り立っていますが、これにレモンなどを添えれば、さらに味と香りもフレッシュになり、飲みごたえも十分になります。
そしてサントリーと言えば、昔からウイスキーの定番と言える商品、サントリーの角瓶があります。
この角瓶を使った「角ハイボール」のマーケティングは、いったいどのようにして成功させたのか、気になりますね。
国内でのサントリーは、ウイスキーの国内最大手なのです。
そのシェアは、なんと6割以上という圧倒的なシェアを誇っていました。
確かにその他のアルコールや飲料メーカーであるキリンとアサヒには、あまりウイスキーという印象はありません。
キリンなら「キリンラガー」、アサヒなら「アサヒスーパードライ」というように主力の商品としては、やっぱりビールの印象が強いのですが、「ウイスキー」となると「サントリー」というイメージがあります。
サントリーにとって「ウイスキー」は、同業他社との差別化をはかる商品とも言えました。
しかし、そんな「ウイスキー」は、長年に渡って消費量については、これまでずっと低迷していました。
ビールが表なら、その影でウイスキーは、じっと隠れていたことになります。
そんなウイスキーを世の中に浸透させたのは、サントリーの戦略的マーケティング活動が功を奏したからに間違いありません。
マーケティング成功事例。とりあえずハイボールに至るまで②【プロダクト・エクステンション】
「マーケティング成功事例。とりあえずハイボールに至るまで」というテーマで次に取り上げるのは「プロダクト・エクステンション」です。
これまで長きにわたり、低迷していた商品にスポットライトを浴びさせたということは、正に戦略の勝利としか言わざるを得ないのです。
「ウイスキー」のマーケティング活動として仕掛けたのが「ハイボール」というわけなんです。
「ハイボール」としてヒットさせたサントリーの売上は、前年比2ケタペースというハイペースで伸びています。
この「ハイボール」ヒットの凄いところは、商品自体は、新たに開発したものではなく、既存の商品の見せ方、売り方を変えたことにより売上を伸ばしたということなんです。
つまり、過去の商品のリバイバイルブームを作り、新たな物として定着させていったというわけです。
商品としての「ウイスキー」は、既に完成されていて誰もが知っている商品でした。
そんな商品に再び脚光を浴びさせて注目させたのです。
そのようなマーケティング手法を「プロダクト・エクステンション」というのです。
サントリーが仕掛けた、この「ハイボール」戦略は、「プロダクト・エクステンション」のわかりやすい成功事例と言えます。
まずウイスキーに言えることは、「ウイスキー市場」全体として低迷していたということです。
なぜ、低迷していたか?
と言うと、それは単に人々の関心が低く注目されていなかったからです。
かつては、ウイスキーもブームとなった過去はありましたが、その時代、需要があったのかクラブ、バー、スナックなどでした。
つまりいわゆる酒場市場のニーズが高く、ウイスキーの存在価値は「食後酒」だったのです。
立場的には2次会、3次会以降に飲むアルコールとしての認識が高かったのです。
ちびちびと、ゆっくり飲むのがスタンダードとしてのウイスキーの立場であり、それが常識のような見方もあったのです。
確かにこのスタンスでは、売れる物も売れません。食後酒としてのイメージの定着は、言ってみれば、消費者を限定し狭めていることになるのですから、長きにわたり低迷することも理解できます。
本当のウイスキー好き、酒好きしか飲まないようでは市場は大きくなりません。
かつてのウイスキーの需要と言えば、いわゆる接待の法人需要が強く一般需要は低かったのです。
そこでサントリーが目をつけたマーケティング戦略がプロダクト・エクステンション。
需要を一般層に広げ、消費者層を拡大すること、それから衰退している物を新たな手段により復活させることだったのです。
マーケティング成功事例。とりあえずハイボールに至るまで③【ハイボールをブームにしたマーケティング戦略とは】
「マーケティング成功事例。とりあえずハイボールに至るまで」というテーマで最後に取り上げるのは「ハイボールをブームにしたマーケティング戦略とは」です。
そこで、サントリーが打った手というのは、何だったのか?これがポイントとなるわけです。
サントリーは、飲み方の基本を見直すことになります。
それはウイスキーが「一杯目に飲める商品」として、その存在価値をアピールするというものでした。
食後酒ではなく食前酒とポジションをシフトさせることによってウイスキー市場そのものの価値観を変えていくということでした。
となると市場としては、クラブやバー、スナックなどではなく1軒目としての需要がある「居酒屋」でのニーズを広げることでした。
居酒屋に入って、まず一杯目の定番として、これまではビール一択の時代でした。
最初の一杯としては、喉越しがよくグッと飲めるビールの存在感が圧倒的でした。
一方、ウイスキーのイメージは、ロックや水割り、ストレートなど最後の一杯としての役割でした。さらにウイスキーは好みがわかれるアルコールでした。
確かにウイスキーそのものの美味しさを感じるには、ロックやストレートなどが代表的ですが一般層に広げるには、本当の美味しい飲み方としては、違ったわけです。
どちらかというと、これまでは、通好みの美味しい飲み方で売ってきたというわけです、
では、どうすれば居酒屋ターゲットの顧客に対しアピールできるのか?と考えた結果、たどりついたのが「ハイボール」という飲み方でした。
つまり、これまで前面に押し出されていなかった「美味しい飲み方」を知ってもらうことから、はじめたのです。
さらにサントリーが仕掛けたのは、飲み方だけではありません。見せ方でも変化を与えたのです。
「見せ方」というのは、心理的にも非常にインパクトがあり、人の心にダイレクトに訴えかけるものです。
サントリーが居酒屋ニーズを増やす時、見せ方にこだわったのが、角ハイボールに採用されたのがジョッキグラスでした。
ジョッキグラスのこれまでの定番中と言えば「ビール」でしたが、このビールと同様に一杯目からゴクゴク飲めるアルコールとしてのイメージ戦略を積極的に仕掛けていったのです。
その爽快感から、誰しもが飲んでみたい、美味しそうと思えるようなイメージを戦略的に仕掛けていったのです。
その為には、大々的な広告戦略も展開されました。
皆さん、よくご存知かと思いますが「ウィスキーがお好きでしょ」のCMソングは、耳に残っているのではないでしょうか。
このCMがウイスキーのイメージを大きく変える戦略として大成功したのです。
さらにマーケティング戦略としては、CMだけではなくWebマーケティングも実施しました。
ハイボールの作り方のレクチャー動画の配信、インフルエンサーの活用など、様々なコンテンツの作成やウェブからの情報発信によりハイボールそのものをブランド化していったのです。
そんなサントリーの「角ハイボール」プロジェクトがスタートしたのが2008年に始めでした。
それから時は流れ、すっかり定番化したハイボールは、ウイスキーの価値観を大きく変えたきっかけとなりました。