安い、美味い、早いで、お馴染みの牛丼の吉野家。厳しい外食産業において様々な時代を乗り越え、愛され続ける吉野家。
そんな吉野家がヒット商品を久々に生み出し話題となっています。今回は、そんな吉野家の営業戦略を徹底解剖してみます。
起死回生の吉野家のヒット商品「超特盛」
飲食業界は非常に厳しい時代で様々な問題があります。今後の日本の人手不足は飲食業界にとっても大きな問題。人材の確保に四苦八苦しています。
また人の口に入るものである商品は、衛生面や材料などのコスト面などにも影響を受けます。それだけでなく外食産業は、景気の動向にも左右されます。
しかし「食べる」という事に関しては、人間の日常からなくなることはありません。「食」を提供する企業は、なくてはならないものです。
どんな飲食店でも安全で安くて美味しい食べ物を提供しようと日夜努力しています。
そんな中で牛丼チェーン大手の吉野家といえば、早い、安い、美味いで有名ですね。吉野家の牛丼を心から愛する吉牛フリークもかなり多くいらっしゃいます。
吉野家と言えば、かつては牛丼の要である牛肉の調達ができず苦戦を強いられました。その際には、苦肉の策として牛肉ではなく、豚肉を使い豚丼を発売するなど対策を行いましたが、牛丼の提供を出来ない吉野家からは、客離れ、ファン離れという状況となりました。
日本3大牛丼チェーンと言えば、吉野家、松屋、すきやとなります。かつては、牛丼チェーン店トップに君臨していた吉野家も、トップの座を他社に譲りわたしてしまいました。
そんな吉野家ですが、今年の決算では、赤字から黒字となったのです。
今月(2019年7月9日)に発表した具体的な決算内容ですが、2019年3~5月期の連結決算として営業利益が10億4400万円。前年同期が1億7800万円の赤字だった状況から一転して黒字転換という結果を残したのです。
決算内容としては、ある意味サプライスとなりました。この黒字決算の要因となったのが、牛丼の新サイズ企画として発売した「超特盛」の売上が予想を上回り好調だったことです。
牛丼「超特盛」がヒットした理由とは?その魅力とは?
吉野家にとって黒字決算という好結果をもたらした牛丼の「超特盛」がヒットした理由とは、いったい何なのでしょうか?
まさに吉野家の起死回生とも言えるヒット商品となったわけですが、実は吉野家そのものも、「超特盛」がここまでヒットするとは全く持って予想しなかった結果だということです。
つまり、吉野家にとっては想定外となるヒットとなり、赤字脱却の起爆剤となったわけです。
ヒット商品を生み出すのは、並大抵のことではありません。飲食業界に限らずどんな企業であってもヒット商品を出すのには、各企業の汗と涙の企業努力によってもたらされており、緻密なマーケティング調査や、繰り返し行われる商品開発の舞台裏があってこそ実を結ぶのです。
しかし、いくら企業側が努力し、商品の性能やクオリティが高いものであったとしても、ヒットする保証などどこにもありません。
ヒット商品が成り立つのは、その時代の影響にも大きく左右されます。流行りや物の価値観、考え方、ライフスタイル、時代とのマッチング、そして「今」を生きる人の感覚によってヒットするかどうかは決まるのです。
今回の吉野家の牛丼「超特盛」にしても、商品そのものは、これと言って珍しいわけではなく、全くの新商品というわけではありません。
味は、普通の並盛と全く変わらない吉野家の牛丼なのです。違うのは、「サイズ」のみとなります。吉野家の牛丼は、ニーズに合わせて様々なサイズがありますが、実は吉野家が新サイズを発売したのは、1991年以来、なんと28年ぶりのこととなります。
これまでの吉野家の牛丼のサイズは、並盛、アタマの大盛、大盛、特盛の全4種類でした。そこに今回、投入した新商品のサイズが、「小盛」と「超特盛」の2種類となります。
両極端なサイズ間の投入ということで、これまでのラインナップのミニマム、マックスのサイズを投入したこととなりました。
小盛は「並盛」の4分の3ということで、食の細い方や女性に向いています。「超特盛」はお米の量は、「大盛」と同じで、肉の量が「大盛」の2倍となっており、大食漢の方や肉好きの方に向いています。
幅広い層の方を満足させる商品ラインナップとなったわけです。
今回の新サイズ投入は、吉野家創業120周年を記念した目玉企画として行ったそうですが、予想外のきっかけとなったようです。
「超特盛」は、人の心を揺さぶる
超特盛の価格は、税込みで並盛より400円高い780円となります。ランチメニューとしては、ワンコインランチなどを考えても決して安いわけではありませんがヒットしています。
発売後1カ月でなんと100万食を達成したのです。はたして、超特盛は、そんなにお得なんでしょうか?実は並盛ニ杯を頼んだほうが量も価格も実はお得なんです。
にも関わらず「超特盛」がヒットした理由は、「超特盛」というキーワードが人の心を惹きつけた一因でもあるのです。「なんとなくお得?」という心理面を芽生えさせたからなのでしょう。